西園寺先生は紡木さんに触れたい

「初恋は実らない…か。」


西園寺はそう漏らしてため息をついた。


それでも今日西園寺が彼女を自分の車で送り出そうと思ったのは、彼女のことを心から愛しているから、だ。


好きだから断れなかったし、愛しているから幸せになってほしいと思った。


本当は僕が幸せにしたかったけど…


それが無理ならせめて、最後まで見送りたい。


そんな物思いに耽っていると、気づけば紡木が住んでいるマンションの前に到着していた。


エンジンを止めて一つ深く呼吸をすると、西園寺はポケットから携帯を取り出して、紡木に電話を掛けた。

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