西園寺先生は紡木さんに触れたい

「もしもし、紡木さん?」


『もっ、もしもし!…うわっ!』


慌てている彼女の声と共にガタン、と大きな物音が聞こえてきた。


「大丈夫!?」


『だ、大丈夫です、…ちょっとフローリングで滑っちゃいました…。』


へへ、と笑う彼女の声に、西園寺は一気に気が抜けてフッと笑った。


「もう着いたよ。準備は大丈夫?」


『は、はい!すぐ行きます!』


彼女の声と共にガタガタと物音が再び聞こえると、西園寺は急に彼女が愛おしくなった。


「急がなくて大丈夫だから、ゆっくり来て。」


『はは…スミマセン。』


「紡木さん。」


『あ、はい?』


好きだよ、


西園寺はそう言おうとして、やめた。


最後の最後まで紡木さんを困らせたくない。


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