西園寺先生は紡木さんに触れたい
『先生?何か言いました?』
余りにも長い沈黙に紡木が聞き返すと、西園寺は「ううん、何でもない。」と返した。
「じゃあ、一旦切るね。」
『え?本当ですか?』と食い下がる紡木を無視して半ば強引に電話を切ると、西園寺はシートにもたれて再び大きなため息をついた。
暫くしてマンションのエントランスから人影が見えると西園寺は車を降りた。
その影は案の定紡木のもので、彼女は西園寺を見つけると「お、お待たせしましたっ!」と声を掛けた。
その姿は緊張のあまりロボットのようなカクカクとした動きだったが、西園寺はそれすら気付かぬ程彼女の服装に心臓を抜かれていた。
フィット感のあるニットに、チェックのタイトスカート。丈が長めでいつもよりも大人びて見える。
なんで、なんでこんな日に限って
僕のどタイプな格好してんの…。
それが千秋の入れ知恵だとは知るはずもない西園寺は、思わず頭を抱えた。