西園寺先生は紡木さんに触れたい

入り口の目の前で彼女を降ろして彼女を見送ろうと思っていたが、11月の夕方は思った以上に日が落ちるのが早い。


西園寺は駐車場に車を停めて、入り口まで牧野にバレないように彼女を見送ることにした。



「…寒いね。」



なんとなく口から溢れた西園寺の言葉に紡木は、「急に、冬ですね。」と言って着ているコートをぎゅっと握ってから「でも…。」と続けた。



「寒い方が空気が澄んでいて、イルミネーションが綺麗に見えるらしいです…。」


俯きがちにそう言って笑う彼女の言葉に、西園寺は少し間を開けてから「…良かったね。」とだけ返した。


僕は紡木さんと一緒には見れないのに、そんなこと言うんだ…。


西園寺はそう心の中で悪態をついた。


程なくして入り口が見えてきた。


煌びやかにデコレーションされた入園口を見つけると、西園寺の胸がぎゅうっと掴まれたように痛くなった。



入り口目掛けてまっすぐに進む彼女の背中を立ち止まって見つめた。

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