西園寺先生は紡木さんに触れたい




さようなら、紡木さん。






さようなら、僕の初恋…。





込み上げてきた涙を抑えるために空を仰ぐと、「先生?」と少し離れたところから紡木に呼ばれた。


ゆっくり視線を移すと、彼女は首を傾けて西園寺を見ていた。


「どうしたんですか?」


そう言う彼女に、西園寺は柔らかく笑った。


「行ってらっしゃい。」


「…え?」



西園寺の予想外の言葉に、紡木は思わず大きな声を上げた。


そんな彼女の声に、西園寺も「え?」と首を傾げた


「早く行きましょうよ。」


「え?いや、僕は…。」


渋る西園寺に、紡木は「あっ!」と何かを思い出したように呟くとそのまま続けた。


「ここは入園料無料ですけど…。」


チケット売り場でも探しているのか?と思った紡木が投げた言葉に、西園寺は思い切り首を傾げた。


「ん?…牧野くんは?」


少し躊躇ってから出た声はアホみたいに上擦っていた。


「牧野くん?なんで急に牧野くんが…?」


急に出てきたその名前にきょとんとする紡木に、西園寺は苛立ちと困惑を覚えた。

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