西園寺先生は紡木さんに触れたい

「だって紡木さん、あの日屋上で牧野くんをデートに誘ってたでしょ!?」



「えっ、あれ聞こえてたんですか!?!?…あれは先生を誘うための練習で…!」



紡木にそこまで言われて、西園寺はようやく自分の勘違いに気づいた。



『今週の土曜日、光の郷っていうところのイルミネーションを見に行きたいんです!だから…。』



あれは何も牧野と夜にデートするから連れてけって意味じゃなくて…


もしかして、もしかしなくても、僕をデートに誘ってくれてた…?


途端に顔から火が噴き出るんじゃないかと言うほど赤面し、心臓がどくどくと高鳴った。

西園寺は赤くなった顔を大きな手のひらで隠して呼吸を落ち着かせた。


「先生…?」


いつの間にか近づいてきていた紡木に顔を覗き込まれた西園寺は、ハッと我に返って「ご、ごめん。大丈夫。」と顔を上げた。


「僕が勘違いしていたみたい。」


そう顔を真っ赤にして面目なさそうに笑う西園寺の姿に、紡木は愛おしさを感じて自然と頬が緩んだ。


「先生、行きますよ。」


そう言って歩き出す紡木の背中に追いつくように、西園寺は早足で近づいて隣に並んだ。


もしかして、紡木さんって、僕のこと…―


そんな思惑が西園寺の頭の中でぐるぐると巡る。


西園寺は緊張で余裕のない表情を見せられまいと、紡木の少し先を歩いた。




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