西園寺先生は紡木さんに触れたい



「わあ…。」


入り口から少し歩くと、電気で飾られたトンネルが2人を出迎えた。


その煌びやかな光に、紡木は思わず声を上げた。


電飾の光が反射した紡木の瞳と無邪気な笑顔を、チラリと横目で見ると西園寺の頬が自然と緩んだ。


「綺麗だね。」


そう言う西園寺の視線の先にはイルミネーションよりも輝く紡木の笑顔があることなんて紡木本人は気づいていないようで、「綺麗ですよね…。」と感嘆の声を返した。


トンネルの中を2人で歩いている時も、「わあ…。」「きれい。」と小さく声を上げる紡木に西園寺の緊張もいつの間にかほぐれ、ただ穏やかな笑みを浮かべて彼女を見つめていた。


光のトンネルを抜けると大きなツリーが立っている広場に辿り着いた。


勿論ツリーも沢山のオーナメントや電飾で飾り付けられていて、紡木は再び幸せならため息をついた。


「すごい…綺麗。」


「だね。綺麗。」


そう言いながら視線は自分の方から動いていない西園寺にようやく気づいた紡木が「本当に思ってます?」と頬を膨らませてそう返した。


「うん、本当に思ってるよ。すごく綺麗。そのくるっとしたまつ毛も、ピンクのリップも、瞼の上のキラキラも。」


西園寺の甘い言葉に紡木は「は?えっ?な、何言ってるんですか!」と顔を真っ赤に染めて突っ込んだ。


慌てふためく紡木の姿に、西園寺はくすくすと笑った。


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