西園寺先生は紡木さんに触れたい
「…あ!こっち行ってみましょ!」
話題を変えようとした紡木はそういうと、広場から幾つか分岐している道にずんずんと進んでいった。
西園寺も数帆遅れて彼女の背中へとついていった。
道中にもハートやサンタクロースを電飾で模ったものが散らばっており、それを見つけるたびに紡木はたのしげな声を上げた。
「こういうところ来るの初めてなので、新鮮です。」
初めてという言葉と静かに笑う紡木に、西園寺は胸を高鳴らせた。
「初めてが僕でよかったの?」
そう言う西園寺の言葉に紡木は一気に顔を上気させて「えっと、あの、」と言葉を詰まらせた。
「せ、先生は、来たことありますか?」
話を逸らそうと咄嗟に出た紡木の問いに、西園寺は顎に手を当てて考え出した。
「えっ?…うーん、どうだったかな。」
昔、学生の頃に来たような気もするが行った相手が相手なので適当にはぐらかした。
「…行ったことあるんですね。その反応は。」
「いやっ、まあ…でも、こんなに楽しいのは初めてだよ。」
ムッとした口調で言う紡木に西園寺がはにかむと、「ずるいです。その返事。」と更に頬を膨らませて拗ねたような口調で言ったかと思えば、「…迷惑じゃなかったですか?」と恐る恐る上目遣いで西園寺の顔を覗き込むようにそう聞いた。