西園寺先生は紡木さんに触れたい

「わあ…。」


道を進んでいくとピンクや白、赤の電飾で彩られ一際輝く塔のようなものがある場所へと辿り着いた。


『恋人の鐘』と大きく書かれた看板の横に立つ塔からは確かに鐘がぶら下がっていた。



『恋人の鐘っていうのを好きな人と鳴らすと永遠に一緒にいられるらしいよ。』



これが、牧野くんが言ってた鐘かあ…。


「恋人の鐘、だって。」


「ですね。」


「ここで鐘を鳴らした恋人は永遠に一緒にいられる…ってさ。本当かなあ。」



緊張で高鳴る紡木の心臓とは裏腹に、西園寺はハハッと笑ってそう言った。



紡木は意を決して鐘の方へ早歩きで向かうと、紐を掴んで西園寺の方へ振り向いた。



キラキラと光り輝く赤の電飾に照らされる紡木の優しい微笑みに、西園寺は急に一年前の体育祭を思い出した。



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