西園寺先生は紡木さんに触れたい

西園寺は体育祭の最後の競技であるリレーに、教員代表として出場した。


そもそも走ることが嫌いな自分が出るべきではないとやんわりと断ったはずだが…



『そんなこと言って〜、どうせ運動もできちゃうんでしょ!』


『いや、本当にできなくて…。』


『大丈夫ですよ、速くても遅くても先生が走ってるだけで女子が喜びますから!』


『そもそも走ることが苦手で、』


『そうですよ!いやー盛り上がるだろうなあ。』


学年主任や他の先輩教師がそう言って西園寺の願いは聞き入れてもらえなかった。


これ以上言っても無駄だと踏んだ西園寺は仕方なくリレーに出場することになった。



走ることは、嫌いだ。



他人と比べられることは、もっと嫌いだ。


だからと言って駄々を捏ねて避けることもできなくて。


これが大人になるってことか。


なんて顔を思い切り顰めた。



体育祭当日。


最後の競技。


深呼吸をした俺はゆっくりとトラックの中に入った。


緊張で胃がキリキリと痛んだ。


「キャーッ!ケイト先生ー!!」

「ヤバい!マジかっこいい!」

「せんせー頑張ってー!」


そう声援を送る生徒たちに手を振る余裕などないほど西園寺は緊張をしていた。

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