西園寺先生は紡木さんに触れたい
やがてすごい形相で走ってきた佐野先生からバトンを受け取り、西園寺は走り出した。
風を切って走る爽快さを身に感じて、西園寺は内心ホッとした。
気づけば先頭を走る生徒を視界にとらえていた。
あと少し。もう少し。
そう思っていてもなかなか縮まらない距離に、途端に胸が苦しくなった。
高校生といえどまだ発達途中な背中。
そこに過去を重ねて胃の中から何かが込み上げてくるような感覚がした。
そして─
「あっ。」
ゴールまで10mで足がもつれて見事に転倒。
だからやりたくなかったのに…。
結局僕はこうなんだ。