西園寺先生は紡木さんに触れたい
「先生!」
そんな彼女が今、目の前でまた僕に笑いかけてくれている。
「西園寺先生。」
今にも泣き出しそうな紡木の顔を見て、震える彼女の声を聞いて、西園寺は胸がいっぱいになって声がうまく出せなかった。
「私、先生のことが好きです。」
その言葉に西園寺はクラクラした。
「先生は、私の男性が苦手っていうコンプレックスを、気持ち悪がることなく、受け入れてくれた。
それだけじゃなく、一緒に克服しようと考えてくれて
…本当に感謝してます。
時には父から私を守ってくれて、優しく包み込んでくれて、私が今まで知らなかった感情をたくさん教えてくれた。
そんな先生が、大好きで、先生とならこの先も進んでいけそうな気がするんです。」
ゆっくりと想いを伝える彼女の震える声を、西園寺はじっと聞いていた。
「先生、私と付「待って、紡木さん。」
寒さなのか緊張しているからか、それともそのどっちもなのか、紡木の声は震えていた。
その声を遮る西園寺に、紡木は驚いて目を丸くして彼を見つめた。
「だめ。」
西園寺の声が響いた。その言葉に、紡木はまあるく開いた目に涙を溜めた。
だめ?どうして?
頭の中に?を浮かべる紡木に、西園寺はずんずんと近づいて、紐を掴む彼女の手を上から握った。
触れ合う体温に驚いて紡木は西園寺を見上げた。