西園寺先生は紡木さんに触れたい
全身に襲う寒気と、蕁麻疹がぽつぽつと湧き上がる感触を抑えながら、紡木は懸命に廊下を走っていた。


え??好き??結婚???どういうこと???


先ほどの情景を浮かべるたびに湧き上がる疑問と吐き気に、とうとうトイレへと駆け込んだ。


うう。おえ。


気持ちが悪くて、便器に向かって胃の内容物を吐き出している自分が情けなくて、紡木の目には涙が滲んだ。


自分でもどうしてこんな嫌悪感が生まれるのかわからない。


本当だったら吐きたくもないし、人を純粋な気持ちで好きになりたいし、恋愛だってしてみたい。


相談してくる子達の、キラキラとした顔を見ていれば、そう憧れを抱くのも当然のことだ。


先生の気持ちだって。本当は素直にありがとうって言いたい。


でもその前に、吐き気と嫌悪感が止まらないんだ。



こんな自分が嫌だ。



自己嫌悪に溺れながら、紡木は便座に突っ伏した。


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