西園寺先生は紡木さんに触れたい
一方、その頃化学準備室では─
ひとり残された化学準備室で、西園寺はぼーっとしていた。
彼女に嫌われてしまったのだろうか。
いや、そうでなくても好かれてはいないのは分かった。
さて、どうしたものか。
西園寺は不意に外に目をやった。
…ここから、どう挽回していこうか。
西園寺には諦めるつもりなんて毛頭なかった。
紡木が9歳も歳の離れた生徒だということは、西園寺にとってはどうでもよかった。
ただ、手に入れたい。
初めてハッキリと抱く感情を、心の中で呟くと、西園寺の鼓動がドクンと高鳴った。
その為には…どうしたらいい??
今まで女性の方から自動的に言い寄られてきた西園寺には、どうやって自分から女性にアプローチをしたらいいのか見当もつかず、顎に手を添えてうーん、と唸った。
『毎日愛を伝えるとか?どれだけ大切に想ってて、離したくないのかを言葉にすればいいんじゃない?それでも無理なら荷物持ってあげたり、困っていたら助けてあげたりとか。』
『女の子は誰かに大切にされて、お姫様扱いされると好きになっちゃうのよ。』
あの日、屋上前の階段付近で聞こえてきた彼女の言葉を思い出して、「ああ!」と西園寺は呟いた。
毎日愛をどれだけ大切に思っているか伝えて、困っているところを助けて、お姫様扱いをする。
それが今、紡木さんが求めていることなんだ!
紡木の事情など全くもって知らない能天気な西園寺は、具体的にどうしようかと画策し始めた。