西園寺先生は紡木さんに触れたい

「まあ、紡木さんのことが好きな僕に情けをかけてよ。」


そう言うと紡木は少し悩んだ後、静かに頷いた。


送ってあげられる口実があるのは、今日までだから。


西園寺はそう切なく胸中で呟くと、紡木と一緒に車まで向かった。





「参考までに聞くけどさ。」


車が走り出してからすぐ、西園寺は意を決したようにそう話し始めた。


「どうしたら紡木さんに振り向いてもらえるかな?」


そう静かに聞く西園寺に紡木は言葉を詰まらせた。


それは、無理な話だ。

この三日間西園寺と過ごしてきて、ちょっとおかしなところもあるけど決して悪い人ではないんだなっていうのは分かった。


みんなが好きになるのも分かる気がする。


でも、私は…


考えただけで胃の内容物が込み上げてくる感覚に襲われるし、触れるだけで蕁麻疹が出てしまう。


そんな私が先生のことを好きになるなんて、きっと無理だ。


優しく私も見つめる眼差しに、私も普通の女の子だったらきっと応えてあげたくなっただろう。


でも、無理なものは、無理だ。


そんなことを正直に話すわけにもいかない紡木は、ただ一言だけ「わからないです。」と告げた。


西園寺は明るい声で「そっか。」と返すと、それきり黙った。


…なんか、悪いことしたな…。


そう紡木が俯いていると、西園寺が「…クールな感じにイメチェンしてみる…?俺様な感じとか…?」とブツブツ呟いていて、申し訳なさでいっぱいだった気持ちを返してくれとため息をついた。


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