私だけはあなたが好きだから大丈夫
エピローグ(鏡②)
未来に戻った博士は、鏡の前に立ち、自分の顔をまじまじと見つめている。これまで顔の傷はいつも気になっていたが、ちゃんと見ることはできなかった。この傷を消した方が、これからの生活はずっと楽だったかもしれないなと思い、博士は苦笑いした。
「自分の傷をまっすぐ見られるようになったのね」
鏡の中の自分が問いかける。
「そうよ、まぁ顔は変わっていないけれど、ちゃんと別人になったでしょ?」
博士は鏡に笑いかける。
「傷を消すのがこわくなったの?」
今度は少しいじわるな口調で博士に聞いてきた。
「誤解しないで。私は今の自分が好きになったから、傷を消さなかったの。ずっと一緒に生きてきた、あなたが好きなのよ。それに私は何も諦めるつもりはないわ。私は私のしたいようにする」
「前を向いて生きると、傷つくことも増えるわ。本当に大丈夫なの?」
鏡の中の自分が不安そうに尋ねる。
すると博士は、にっこりと笑って答える。
「たとえ誰にも選ばれなくても、私だけはあなたが好きだから大丈夫よ。それに、プリンセスの物語はハッピーエンドと決まってるのよ」
博士はずっと机の引き出しに保管していた指輪を取り出してきて、少しの間、鏡の前で指輪を眺めた。次の瞬間、博士は指輪を洗面台に落とす。
キンッと気持ちの良い音を立て、金色の指輪は小さな穴の中に消えていった。
「全く、急にどうしたの? 今日は本当に別人みたいね」
鏡の中の自分があきれた様に言う。
「王子様を待つのを止めただけよ。それに急じゃないわ。35年かけて、私は今の私になれたのよ」
博士は鏡に向かっていたずらっぽく微笑んだ。
博士はこれからのことを考えた。
「お父さんとお母さんに会いに行こう。二人とも元気にしているかな? ちゃんと会って話をして、安心させてあげないと。私の事を心配していると思うから。それに、世界を一周して、フランスでケーキを食べて、スカイダイビングをするんだっけ?」
やりたいことがたくさんある。
「そう、私さえしっかりしていたら、未来は変えられる。もう一度、お父さんとお母さんの3人で暮らすことだってできるかもしれないわ」
これから忙しくなるなと博士は思った。
「とりあえず今日は、新しい靴を買いに行こう! プリンセスが履いているような、キラキラしたやつがいいわね」
昨夜の雨はすっかりやんで、今朝は雲一つない青空だ。博士は水たまりが朝日で輝く歩道を颯爽と歩いている。今の私がどんな顔をしているのか、道行く人に見てほしいなと感じながら。
「自分の傷をまっすぐ見られるようになったのね」
鏡の中の自分が問いかける。
「そうよ、まぁ顔は変わっていないけれど、ちゃんと別人になったでしょ?」
博士は鏡に笑いかける。
「傷を消すのがこわくなったの?」
今度は少しいじわるな口調で博士に聞いてきた。
「誤解しないで。私は今の自分が好きになったから、傷を消さなかったの。ずっと一緒に生きてきた、あなたが好きなのよ。それに私は何も諦めるつもりはないわ。私は私のしたいようにする」
「前を向いて生きると、傷つくことも増えるわ。本当に大丈夫なの?」
鏡の中の自分が不安そうに尋ねる。
すると博士は、にっこりと笑って答える。
「たとえ誰にも選ばれなくても、私だけはあなたが好きだから大丈夫よ。それに、プリンセスの物語はハッピーエンドと決まってるのよ」
博士はずっと机の引き出しに保管していた指輪を取り出してきて、少しの間、鏡の前で指輪を眺めた。次の瞬間、博士は指輪を洗面台に落とす。
キンッと気持ちの良い音を立て、金色の指輪は小さな穴の中に消えていった。
「全く、急にどうしたの? 今日は本当に別人みたいね」
鏡の中の自分があきれた様に言う。
「王子様を待つのを止めただけよ。それに急じゃないわ。35年かけて、私は今の私になれたのよ」
博士は鏡に向かっていたずらっぽく微笑んだ。
博士はこれからのことを考えた。
「お父さんとお母さんに会いに行こう。二人とも元気にしているかな? ちゃんと会って話をして、安心させてあげないと。私の事を心配していると思うから。それに、世界を一周して、フランスでケーキを食べて、スカイダイビングをするんだっけ?」
やりたいことがたくさんある。
「そう、私さえしっかりしていたら、未来は変えられる。もう一度、お父さんとお母さんの3人で暮らすことだってできるかもしれないわ」
これから忙しくなるなと博士は思った。
「とりあえず今日は、新しい靴を買いに行こう! プリンセスが履いているような、キラキラしたやつがいいわね」
昨夜の雨はすっかりやんで、今朝は雲一つない青空だ。博士は水たまりが朝日で輝く歩道を颯爽と歩いている。今の私がどんな顔をしているのか、道行く人に見てほしいなと感じながら。