雪の国の恋、とけない魔法


もしこの緩やかな斜面を降りる前のリフトのあたりだったら、無理を言って帰り方面に乗せてもらうことも出来たかもしれない。

でも、こうやって中途半端に降りてしまっているから、リフトまで登るわけにもいかない、いや、その方がいいのかな⋯⋯ 。

もし、上月さんが通りかかったとしても、こんな素人がこんなところにいたら、メイワクしか感じないだろう。

滑れないから。
私、出来ないから。
滑れたらよかったのに。

意外とショックで心が暗くなる。
3人が意地悪で酷すぎるとも思うし、でも何より自分の不甲斐なさが1番嫌だった。
どんな誘われ方であれ、ここにきてしまったのは自分だ。
自分のイマイチさが招いた事だ。

出来ないのに旅行に来たから。
誘われてリフトに乗ったから。
初級なら出来ると思ったから。
ちゃんと滑れるようになってから参加すればよかったんだ。
ちょっと泣きそうだった。

板を外しても、それを持って、しかもこの靴で、こんな急斜面どう降りていいのか、正直わからないよ。

天気も悪くなって雪がどんどん降ってくる。
視界も本気でマズイ。
心細い。
何だか誰も通らない。
何の物音もしなくて、雪の上、シーンと逆に音のない音が聞こえるようだった。


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