雪の国の恋、とけない魔法
[リフト23分の20、もうすぐだね]
もうすぐ。
香月さんが来てくれる。
来てくれて、どうする?
スキーのできない私で申し訳ないんだ。
[はい、ついた、いちど切るね]
「はい」
と小さく、情けない声しか出ない。
程なくして、雪の中影が見えてきた、と思ったらシャーと目の前に黒のウエア。
あっという間に香月さんが立っていた。
「大丈夫? 」
「私、降りれなくて⋯⋯ 」
と声が震えた。
「ここは1人じゃ怖いでしょ。この坂が一番急だから、これさえ降りればいけるよ」
と落ち着いて言ってくれる。自分でどうにかしなきゃって思った。
「昨日習ったようにいこう」
と説明してくれる。
「急だから、下じゃなくて横に行くよ。斜面側のここの板を少し立てるようにして、そうしたら落ちないから。まずそこの端まで行くよ、」
「ついてきて」というから、その落ち着いた、自信のある、確信のある声に無意識に従えるような声だったから、後ろから昨日習ったことを思い出して、あわてずについていく。
雪がどんどん降っていたから、見えにくくて、でも怖くない、その斜面の右側に着いたら、
「今度は逆ね、」
と逆の足でブレーキをしっかりかけながら反対側に。
上月さんの姿だけ集中してついていく、右足、左足、右足、左足⋯⋯ 。
数度繰り返していたら、いつの間にか絶対無理だと思った斜面を何とかおりて、少しゆるやかにな下りになった。
「ゆっくりついておいで」
その後も集中しながらゆっくり滑って、いちいち待ってくれている上月さんの後を着いていく。
かなり下った後、昨日練習していた初級者用の斜面に合流した。