雪の国の恋、とけない魔法


「おりれた⋯⋯ 」

「頑張ったな」


と上月さんがゴーグルをあげて、手袋を外して、顔にかかる私の髪の毛をそっとのけて、それから頬に触れた。


「冷えてる、中に入ってなんか飲もうか」


じっと上月さんが私の目を見ていた。無言で彼の目を見たら、彼の目元がゆるんで優しい気持ちが流れ込んできた。

ゆるゆると戻れば、入り口の初心者のいるあたりに美紀と藤枝さんが心配そうにしていた。


「花梨! 」

「美紀⋯⋯ 」

「よかった! 降りれて! 」

「うん、どうしようかと思った」

「何であんなとこ行ったのよ⁈ 」

「えっと、みんなに誘われて」

「だれよ? 」

「⋯⋯ 」

「新田さんでしょ。あの子たち、わざとじゃん、そんなん。わかっててやってるんだよ」


知ってる。私もそう思った。
でもついて行ったのは自分だ。
判断が悪くてイマイチなのは自分だ。
置き去りにしてシュ〜と綺麗に滑り降りる彼女たちに、滑れない自分が悔しかった。


「わざとでも、1人で出来ない自分の方が嫌だ」


と言ったら、美紀が、


「もう、花梨らしいよね」


と言った。
横で上月さんが、自分の髪を手でほぐしながら、黙って聞いていた。

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