雪の国の恋、とけない魔法
ウソみたい上月さんとアドレスを交換して、屋根のある回廊に戻ったら、チラチラと降る粉雪が髪や服に積もってた。
「雪がついてるよ、」
って上月さんが手でそっと落としてくれる。
彼の大きな手が、肩に、背中に、腕に。
雪はあっさり綺麗に払い落とせて、服も濡れていなかった。それも驚くけど、上月さんがそうしてくれた事にもっと驚く。
上月さんの肩や背にも雪が真っ白に着いている。
「上月さんもついてます」
手を伸ばしたら、高い位置に肩がある。上月さんが少しかがんでくれた。顔が近くなって、恥ずかしいから余計、一生懸命雪を払う。彼の服の感触は知らない感触、その下の体が固いから、背中が広いから、肩ががっしりしてるから、思わず薄く口を開いて、彼の顔を見てしまった。見つめあったまま上月さんが、
「ふふ、髪にも雪がついてる」
と低く言って花梨の髪に手を伸ばした。ゆっくり雪を落として、そのうち耳に親指があたって、おでこにも触れて、頬に触れた彼の指は温かかった。
花梨の頬は冷えていた。
彼が笑いながら。
「頬が冷たい。アイスみたいだね」
って言った。
唇を開いて、見上げて、近い距離の上月さんて、ヤバい。
上月さんは反対の手で自撮りで構えて、カシャ、とツーショットを映した。
花梨は緊張しながら、赤くなって、恥ずかしいけどドキドキがとまらなかった。