雪の国の恋、とけない魔法
そのあと、お土産の置いてあるオシャレなショップに寄った。一度も人と会わなかった。ショップの中も広々とあたたかく、2人以外誰もいない。
美味しそうなお菓子!
自分用にも食べてみたい!
あ、これ家族が好きそう、これも、いやこっちのが。
目移りしながら端から見ていく。
上月さんがいつも買うというチョコレートのお菓子は、絶対買うことに決めた!
美味しそうだな、とお菓子を見ていたら、後ろから上月さんが手を伸ばして、
「食べてみたらいいんじゃない? 」
とそのお菓子の3個入の小さな箱を手にとった。後ろからかがむようにとる時、花梨の顔の真横でチラッと向いて目が合って、彼はフワリと笑った。
そのままレジに行き、サッと会計を済ませて、
「はい」
とそれを花梨にくれた。
トクベツ?
私は上月さんにとってトクベツ?
そんな風に笑われたら、こんな風に親切にされたら、特別なんじゃないかって感じてしまう、いいの? そう思ってしまって?
「誰に買って帰るの? 」
「えっと、家族と兄と姉と、あ、会社と、大学時代の親友と、かな⋯⋯ ? 」
言葉は上滑りしてる。
頭の中は隣の上月さんでいっぱい。
静かな雪の夜に2人で歩く。
まるで魔法がかかったみたい。
✴︎
部屋に戻ったら、美紀が、皆んなでカップルさんのお部屋で持ってきたワインを飲むんだ、と言われた。
花梨は遠慮した。
アルコールは飲めるのか飲めないのか、限度が分からないし、体がやはり疲れていた。
それに頭の中⋯⋯ 。
今日あった事。
上月さんのこと。
スキーの滑り方。
雪景色。
上月さんの教え方。
彼の声。
笑顔。
思いやり。
彼の目。
上月さんのトクベツ。
彼の優しさ⋯⋯ 。
そう上月さんのことばかり考えてる。
大好きな彼のことばかり。
夜の雪の宮殿。
1人でゆっくり明日の用意をして、寝る準備を終えた。
美紀が戻るまで、何となく待っていようかな。
窓の外はもう雪はやんでいた。