雪の国の恋、とけない魔法

体中に力を入れて、身動きできずにいたら、


「何もしない」


と上月さんがいった。


「明日もあるから、何もしないよ」


と上月さんがつぶやいた。


「安心した? 」


もっと声が低くなって、彼の声が耳をくすぐるようだった。

どんな人なのかちゃんと判断しなきゃとか、本当かな、常識は? とか、こんなことダメだとか。
でも付き合ってたらいい?
ていうか、
上月さんならいいんじゃないかって。

彼だからもういいんじゃないかと思ってしまった。

彼の言ったこと、全部、鵜呑みにすればいいんだ。
簡単な単純な自分でいい。
上月さんがいれば。

彼の言葉が魔法みたいに、簡単に心を支配して、それでいいかな。

現実で違っていて傷つくのは彼じゃなくて自分なら、どうにでも出来るはず。

ちゃんと考えてくれてるのかな、上半身以外は、体が触れないぐらいの距離、なんとなくじわじわ熱い体温がお布団ごしに伝わってきて感じる。動けなくて、そのうち寝息がしてきたから、頑張って目を閉じて、温かい腕の中、花梨も眠りに落ちた。


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