雪の国の恋、とけない魔法
「上月さぁーん、リフト行きますよぉ〜 」
スキーの準備をしていたら、新田さんが声をかけてきた。
美紀が、
「はぁっ⁈ 」
って何か言いかけてぐっと我慢した。上月さんも眉を上げて、少しあきれた顔をした。
藤枝さんが、
「上月とちょっと用事があるから、君たち、滑っておいで」
と愛想よく言ったら、
「えっ、でもぉ、一緒にいきましょ? 」
と全然めげない。
悪いことをしたとか思ってないのかもしれない。
「今は無理かな」
と上月さんが断って、後ろ手に手を振って拒否を示したが、
「滑らないんですかぁー? 」
とくいさがった。
花梨は思わず、
「私は全然滑れないんで、昨日、置いて行かれてものすごく困った」
と新田さんに向かって言った。
新田さんが花梨をじろりと見据えた。
「あら、森川さん滑れないんだ」
と挑戦的に言う。知ってたくせに。
「だから私、今日は上月さんに教えてもらいます。何かあっても遭難しないように」
遭難って物騒な言葉をワザと使った。
「滑れないなんて恥ずかしいわね」
と捨てゼリフを言いながら、3人は「行こっ? 」とゲレンデに出て行った。
「反省してないね」
と藤枝さんが苦笑した。