雪の国の恋、とけない魔法


藤枝さんの話に、背中を押されたような気がした。
新田さんはあきれて、毒気をぬかれたみたいに、もうがっかり、ないわ〜とブツブツ言っていた。
後から来た美紀と上月さんを見つけると、呆れた目で睨んで、またため息をついた。

上月さんは、サッと一瞬で花梨を見つけて、長い足で一直線に花梨の隣にきた。そして花梨を見下ろして優しく笑った。

滑れないと落ち込んだ。不甲斐ないと悔しかった。
でも、それが問題じゃないんだね。
自信がなくて逃げちゃう事がダメなんだ。

上月さんの顔を見ていたら、頑張りたいって思った。
彼の笑顔を手放したくない。

昔から意見をちゃんと持つとか、拒否するとか、苦手だった。
いろんな意見が全部そうだな〜と思えて
強引に言われると悪いな〜と思って断れなかったりした。
上月さんみたいに出来ないってずっと恥ずかしかった。

そんな残念な自分を上月さんに見られたくなくて、いつも逃げたりしてた。

ちゃんとしたいなと思う。
上月さんが好きだから。
自分のダメなところから逃げて、上月さんを諦めたくない。

雪の中、魔法がかかったみたいに感じた。

せっかくの魔法の国。

上月さんのトクベツな優しさ、カノジョなんだ。
しっかり彼の気持ちを掴んで離したくないと花梨は思った。

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