雪の国の恋、とけない魔法

✴︎


晩ごはんの後。
カップルさんの部屋に集まった。


「持ってきたワインは全部飲んでよ〜重かったんだから」


と言いながら、高級チーズのおつまみで、ゆるりと皆で飲んだ。
今日は花梨も参加して、1時間ほどして4人で部屋から出た。

部屋の前で、


「待ってるね」


って上月さんが言った。

藤枝さんが来てチェンジ。
躊躇なく彼のいる部屋に行く自分。
浮かれてるんじゃないかとか、ごめんなさいとか、ちょっとそんな思いが胸をよぎるけど、上月さんだからいいんだ。


✴︎


部屋で2人になった。
窓の外。
雪がふわふわとちらついている。

窓から見下ろせば、張り出した三角屋根にケーキみたいな雪。
はるか下に見下ろす回廊と中庭は幻想的なライトに照らされている。
なだらかに続く深い雪に覆われた山並み。
細い枝だけが茶色い真っ白な山。
どうやってこんな深い山を切り開いたんだろうって不思議になる。

ポワンと積もるふわふわの雪
おとぎの国に2人きり。

窓辺で2人掛けのソファーに座って景色を見ていたら、彼に肩を抱かれて、フワリ⋯⋯ 。

想像してるより柔らかくて、フワリと触れる、自分ではない唇。

昨日、首筋に感じた彼の唇が、私の唇にかさなる。

不思議だ。

魔法がかかったみたいに、頭がボーとして、体が震えて、優しい彼の手とかたくてあたたかい体に包まれてる。

もう何でもいい。

今はもう彼だけで。

ぎゅう⋯⋯ 。

花梨が上月さんにしがみついたから、上月さんが少し驚いた。

もう自分からも上月さんからも逃げない。

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