雪の国の恋、とけない魔法


上月さんを見ていると心が忙しい。
いちいちトクンって、痛いくらい。

こういうとこ。
さりげなくて。
彼は会社でも仕事が出来る。
ハッキリした人だし、厳しいし、思ったことを口にするけど。
でもこんなところ。
肝心なところで優しくて気遣える人。

今日の私服だって清潔に、でも、綺麗すぎずに無造作っぽくて、潔くて、男らしい彼を表してるんだと思う。

声が低音。
背が高くて細身なのに体つきはしっかりしてるし、手足が長いし、まぁ、ほんとにカッコいい。
なのに中身までこんなだから、こんな人近くで見たことなかったから、思わず目がいってしまう。

でもあんまりジロジロ人を見るもんじゃないから、うまーく誤魔化しながら、でもうっすら見たりしてしまう。

新田さんと同じだ。

彼女は上月さんを私物化して、毎回お話されてるから、今回頑張るつもりなんだろう。
彼女はスキーも上手そう、あの装備だ。でも主な目的は上月さんかな。
私たち同じだ。

チクンと胸が痛んだ。

上月さんは、彼女達と一緒に滑るのかな。藤枝さんも怪我しちゃったし。

上月さんを見ていたら、新田さん達がさりげなく上月さんに近寄るけど、でも上月さんは背を向けて藤枝さんとばかり話しているし、新田さんほどの強引さでもなかなか話しかけるのも勇気がいるようだ。

「なに? 」なんて、あの眼光の鋭さで真顔で聞かれてしまったら、さすがにひるんじゃうと思う。


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