僕らはきっと

5月。

新学期に入って1か月。
この時期になると、だんだんクラス内でグループが出来てくる。
いわゆるスクールカースト上位の派手めなグループ。派手までとはいかないが、ある程度賑やかなグループ。そして、休み時間は静かに本を読んでいるようなグループ。
僕はというと、どのグループにも属していない。
静かな部分だけ見れば、陰の部類に入るんだろうけど僕と一緒にいる人がそうではないからだ。
春川は相変わらず僕とつるんでいる。
本人は持ち前のコミュニケーション力を生かして、同級生だけでなく教師にも可愛がられているようで、誰かに声をかけられている場面をよく見る。
本当に、いったいなぜそんなにも明るく、コミュニケーション力もある春川が僕の傍にいるのか分からない。
とはいえ、少しずつ春川のことが見えてきた。
とにかく性格は明るい。誰とでも仲良くなれるタイプだ。けれど、そこまで人に踏み込まない。どこか一線を引いているように思う。それは、春川がふとした時に見せる不安定そうな、寂しそうな、何ともいえない表情があることに気付いてしまったからだろうか。それとも、僕の深読みなのか。
ただ、一つ確信が持てることは「写真を撮っている時」にそうした表情が多いことだ。
僕は、彼の写真を一度も見たことがない。

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