僕らはきっと
「中学の時からずっと気になってたんだ」
「寺坂、何部だったの」
「サッカー、小学生の時からやってたから。でも、疲れちゃったんだよね。だから、高校は別の部活に入ろうと思ってさ」
そう言って寺坂は部室にあったカメラをいじった。
僕たちは写真部の部室にいる。
部員は2年生が2人、3年生が1人の少数精鋭だ。部活見学に来た旨を伝えると、部長の赤木さんは快く迎えてくれた。
「寺坂君、カメラ経験は?」
「無いです、あ、でも兄貴のカメラを借りて撮影は良くしてました。」
「人物?風景?」
寺坂は少し悩んで「どっちかというと、人物ですね。」と答えた。
「朔田君は?普段何か撮るの?」
「いや、僕は...」
寺坂に頼まれて付いてきただけなんです、とは言えなかった。代わりに、
「風景、ですかね」と答えた。
「そう、今度2人の撮った写真、見せてよ、ね」
キラキラと輝きを帯びた赤木さんに半ば罪悪感を感じながら、僕は黙って頷いた。
寺坂を見る。1枚の写真を見ていた。丘の上に大きな木がたっており、そこに制服を着た男女が寄りかかっている。遠目から撮ったのか、顔までは見えなかった。
「寺坂?」
しばらく間があった後、寺坂はなぜか青白い顔で
「決めたわ、写真部に入る」と答えた。
< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop