僕らはきっと
夢を見ていた。　
ここはどこだろう。陽射しが眩しい。どうやら外にいるようだ。
足元を見ると、色とりどりの花が咲いている。花畑だろうか。
正面から、ゆっくり歩いてくる人影が見えた。片手に紙だろうか、何かで巻かれたものを抱えている。
人影が近付いてきた。
遠目で気付かなかったが、黒いスーツに黒いネクタイを付けている。
どこか見覚えのある男性だった。男性は今、広海がいる場所の数歩先で立ち止まった。どこか一点を見つめながら、跪く。
男性が手に抱えていた紙かと思ったそれは、花束だった。色とりどりの花が並んでいる。
この男性は...？どこかで見覚えがあるのだが、分からない。男性の横顔を見ながら、しばらく考えていたが、ふと気付いた。
彼だ。寺坂だ。でも現在の寺坂ではなく、どこか大人びていた。少なくとも10代には見えない。ゆっくり近付いてきて、彼は僕の足元に屈み、持っていた花束を置いた。
「ごめんな、広海。俺、お前の望みを叶えてやることができなかった。」
そう言って静かに涙を流した。
僕はもう、ただただ黙って見ていることしかできなかった。
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