先生、恋愛を教えて。
そのあと、しばらく雑談会が続き、ようやくお開きになったころにはすでに15時を過ぎていた。
「美菜、ちょっと話もあるから送っていくよ」
「え、いいよ、先輩。すぐ近くだし」
話があるならここでとも思ったのだけれど、すでに先輩は草履をはいて外に出る気満々だ。
着物姿の男女が道を歩いていたら、かなり目立つと思ったのだけれど。
「先輩、着物似合いますね」
「なんだよ、美菜。今日はやけにほめてくるじゃん」
「ちょっと言ってみてだけです」
まだ少しだけ照れくさくて、敬語が抜けなかった。
きっとそれに先輩も気づいている。
「あのさ、美菜、この前言ったことなんだけど」
「お姉ちゃん!」
先輩が口を開いてこちらを見た瞬間、久しぶりに聞く声が耳に届いた。
目を凝らしてみると、アパートの間に立っていたのは妹のさやかだった。
先日の母の電話ではさやかは入院しているはずなのに。
どうしてそのさやかが、元気そうにこちらに向かってくるのだろう。