先生、恋愛を教えて。
3.わたしが本当に欲しいもの
「え?アルバイトしなくてもよくなった?」
次のお稽古で琉生先輩に、妹のさやかが先日なぜ家に突然やってきたのかを説明した。
初めは喜んでくれていたものの、少しショックを受けたような驚いた表情へとみるみる変わっていった。
「うん、おばあちゃんが面倒見てくれたからね」
「そうか……じゃあ、あの話はなしだな」
「あの話?」
そう言えば、先輩、さやかが家に来た時にわたしに何かを言おうとしていたっけ。
あれはいったい何だったんだろう。
そんなことをふと思い出した。
「実は美菜に指導を頼もうかと思ってたんだよ」
「指導?」
「ああ、親父が高校の筝曲部に教えに行ってるのは知ってるだろ?親父も年だし、親父の代わりに美菜に行ってもらえないかと思ってたんだ」
「わたしが?」
指導そのものをやったこともないわたしが、いきなり高校の部活で指導を?
突然の話に混乱するばかりだった。
「実はその高校の校長先生が部活動でもきちんと月謝は払わせるっていう考えの人で、生徒たちからの月謝はほかのバイトの時給より高いと思ってさ」