先生、恋愛を教えて。
「そういうことだったら、父さんにもこの話進めてもらうけど。負担になるようだったら、すぐに言えよ」
「うん、わかった」
最近の先輩は特に心配性になった気がする。
今までもそうではあったのだけれど、ここ最近は特にその傾向が強い。
「美菜はお金貯めて何を買うつもりなんだ?」
「えっとね……洋服もいいし、新しいバッグを買うのもいいよね。何がいいかな」
「まだ決めてないのか」
「ふふ、うん」
わたしが本当に欲しいもの――
確かにこの洋服買えたらいいなとか、このバッグかわいいなとか思ったことはたくさんある。
でも、どうしても欲しいというわけではなかった。
古いけれど、今使っているものでも十分だと感じていたし、今の生活をより切り詰めて買いたいとは思わなかった。
洋服だってバッグだって、いくら友達が流行りのものを身に着けていたとしても、羨ましいと思ったことはなかった気がする。
でも――
そんなわたしにも、一度だけ羨ましいと感じたことがあった。
それは、社会人になってから初めて演奏会に出させてもらったときのこと――