先生、恋愛を教えて。



「当たり前でしょ。そんなことまで先輩にしてもらって申し訳ないし。それに自分の楽器を自分の稼いだお金で買うっていうのがわたしの夢なの」


言葉にしたら、どうしても新しいお琴が欲しくなってきた。

次の演奏会までには間に合わないかもしれない。


でも、間に合わせたい。

今まで抑え込んでいた感情が一気にあふれ出してくる。


もう我慢しなくてもいいんだと思ったら、初めて知る強欲さが顔を出した。


「ねえ、先輩。ちょっとわたし、実家に行ってくる。断られるだろうけど、やるだけやってみようと思って」


意を決したわたしの顔を見た先輩は、ただ「頑張れ」とだけ声をかけてくれた。

その寂しそうな横顔が、今でも脳裏に焼き付いて離れない。


どうして先輩は時々さみしそうな表情をするんだろう。

そんな気持ちで、わたしは数年ぶりの実家へと向かった。


「お父さん、お母さん。お金を貸してください」


両親に土下座をしたのは、この時が初めてだった。

わたしに毎月振り込みをさせるくらいだから、貯金残高なんて雀の涙ほどかもしれない。


でも、もしかしたらお父さんかお母さんのどちらかがこっそりとへそくりを貯めているかもしれない。

そんな期待もどこかに持ち合わせていたのだと思う。




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