先生、恋愛を教えて。
5.音色にのせて伝えたいもの
あれから先輩は「あんなことをされたのに両親を怒らないなんてすごいな」とほめてくれた。
きっとわたし一人だけだったら、両親のことを恨んで恨んで、仕方がなかったと思う。
こうしてお金が用意できるのなら、どうして今までそうしてくれなかったんだって。
きっと言い返していたと思う。
でも、そうならなかったのは先輩のおかげだ。
先輩は時間が空くとわたしの家にやって来て、一緒にお琴を弾いてくれたから。
先輩の音が、わたしをいつも励ましていて、勇気をもらえた。
一人じゃないよって言ってもらえていたから……
「よかったな、本番見に来てくれてるんだろ?」
「うん」
演奏会当日、わたしたちは舞台裏でこんな会話をした。
そう――
2週間目にチケットを実家に送っていたのだ。
せっかくのお披露目の演奏会だから、見てもらもらいたくて。
両親と妹のさやかの3人を招待していた。