先生、恋愛を教えて。
今朝、さやかから「今日お母さんとお父さんと見に行くからね」というメッセージが来ていた。
家族とも今までの溝が少しずつ修復できているような気がしている。
「さあ、次は俺たちの番だ」
「うん」
次の7曲目が名取のお披露目曲だ。
先輩を含む数名の名取が、曲を盛り上げるため助っ人で一緒に弾いてくれることになっている。
普段数十人で演奏するときとは、全く雰囲気が違った。
10名に満たない人数での演奏は、高校での部活動以来だと思う。
ステージの下手側の一番前がわたしの位置だった。
斜め後ろには先輩がいる。
ステージからは客席が意外とよく見えるものだ。
最初の出番があった2曲目の時に、ちょうど中心より少し前の席に座っている家族を見つけた。
これまで妹のさやかを除いて、家族にわたしの演奏を聴かせるのは今回が初めて。
「7曲目は新たに名取となった方々の演奏で、“螺鈿(ラデン)”です」
アナウンスの合図とともに、照明が明るくなり演奏が始まった。
2つのパートの掛け合いが多く、お互いに言葉を交わし合っているような始まりの曲だ。
テンポも速く、聞きごたえのある曲でもある。
きっとお客さんも退屈させない。