先生、恋愛を教えて。
先輩の音がそっと耳に入ってくる。
優しいのに力強い、いつもの先輩の音だった。
でもどうしてだろう。
いつもより温かみがある気がする。
ああ、やっぱり
わたし、この音が好きだ。
先輩のことが好きなんだと、曲が進むたびにどんどん気持ちが高まっていく。
全員が資格を持つ人たちが集まっているから、大勢で弾いているときよりもそろっていて乱れがない。
それに気持ちが乗っかって、興奮が収まらない。
もう言葉にしなくても、この音で自分の気持ちが表現できているみたいだった。
そして、先輩の気持ちが伝わってくるようだった。
どうして今まで気づかなかったんだろう。
先輩はこんなにもわたしのことを考えていてくれたのに。
「わたし、先輩みたいにお琴が弾けるようになりたいです」
「先輩の隣で胸張って弾けるようになるまで待っててくださいね」
そんな言葉を昔、先輩に言ったことを思い出した。