先生、恋愛を教えて。
先輩バカだなあ。
わたしなんかのために、ずっと待っていてくれたなんて。
曲が終わって最初に見えたのは、わっと沸き上がる客席と、先輩の温かな笑顔だった。
「美菜、演奏会が終わったら話あるって言ったの覚えてる?」
出番のない8曲目。
舞台裏で先輩が話しかけてきた。
「うん、覚えてるよ」
「あのさ」
「先輩、まだ演奏会終わってないけど」
「わかってるけど、つい」
そう笑う先輩が、初めて見る表情をしていて少しかわいかった。
わたしたちはどれだけ遠回りをしたのかわからない。
でも、ここから始める関係も悪くない気がした。
「先輩待たせてごめんね。待っててくれてありがとう」
言葉にしてなくても、なんとなく先輩の気持ちが伝わってくる。
それはきっと先輩も同じだったんだと思う。
だって、先輩は
「おっせーよ」と笑っていたのだから――
END