先生、恋愛を教えて。
“あんただって少しは協力しなさいよ”
わたしがいつ協力しなかったことがある?
子どもの頃はすべてにおいて我慢してきた。
やりたかった習い事もやらせてもらえなかったし、修学旅行にも行かせてもらえなかった。
社会人になってから妹のためにとお金を毎月振り込んできた。
お母さんはどれだけわたしに要求すれば気が済むのだろう。
今お稽古が終わったばかりなのに、またお琴が弾きたくなってきた。
そんな時だった。
玄関のチャイムが鳴って、予告のない来客がやってきたのは。
「また先輩ですか」
「またって失礼な。お前は本当に可愛くないな」
時々こうしてふらっとやってくるのは、すっかり先生モードが抜けている琉生先輩。
教室の近くのアパートに一人暮らしをしているわたしの家に、時々お弁当を持ってやって来てくれるのだ。
そして、相変わらずの口げんかが始まるのは、きっと琉生先輩も予想していたことだろう。