千早くんは、容赦が無い
プロローグ
「待って『ちぇりー』、俺好きだ」

 帰ろうとした私に、彼はそう言った。

 SNSでつながったから、まだ本名を教え合っていない私たち。

 彼は「ちぇりー」というユーザーネームで私を呼ぶ。

「え? 好きって何が?」

 なんのことかまったく分からない私は、首を傾げてそう尋ねる。

「だから『ちぇりー』のことが。好きだから、付き合ってよ」

 爽やかに微笑んで、とんでもないことを堂々と言う。

 パニックになった私は、どうしたらいいのかわからない。

 ――だって私は。

 あなたが思っている『ちぇりー』では、ないのだから。

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