千早くんは、容赦が無い
 それもそのはず、千早くんが素早く私の前に飛び出してきて、水を含んだ風は彼に直撃したのだから。

 えっ、千早くん、私をかばってくれた?

 だって、千早くんが全部水を被ってくれたおかげで、隣にいた私はほとんど濡れなかったから。

「げっ、冷たー」

 千早くんは、土砂降りにでもあったかのようにびしょ濡れだ。

 前髪から雫を垂らしながら、苦笑いを浮かべている。

「ち、千早くん! 大丈夫!?」

「びしょ濡れじゃん!」

 千早くんに声をかける、私と桜子。

 涼介くんも心配そうに千早くんを見ている。

「まあ、別にへーき」

へらっと笑って千早くんは答える。

 えっ、でも絶対に寒いよね⁉

 私はタオルハンカチを取り出して、千早くんの顔を拭いてあげる。

 だけど小さなハンカチじゃ、全然水はふき取れそうもない。

 「さんきゅー」なんて軽く言う千早くんだったけれど……。

「このままじゃ風邪ひいちゃうよ! ってか、私が濡れないようにかばってくれたよね?」

「あー、まあ。亜澄が濡れるよりは俺が濡れた方がマシっしょ」

 軽い口調で、なんともないことのように千早くんは言った。

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