千早くんは、容赦が無い
 千早くんは目を見開いて尋ねる。

「えっ、こんなのもらっちゃっていいんですか?」

「もちろんでございます。こちらの不手際でお客様にご迷惑をかけしましたので」

「いや、迷惑というほどでは……。でもせっかくなんでもらっちゃいます」

 なんて、ちゃっかりカフェの無料券をもらう千早くん。

 ペコペコしながら係員さんが去ると、千早くんは「ちょっとこれ持ってて」私にカフェの無料券とブランケットを手渡して、バスタオルで頭を拭いた。

「二枚あるね、券」

 てっきり千早くんの分だけかと思ったんだけど。

 私が彼の隣にいたから、係員さんも気を使ってくれたのかな。

 ――すると。

「あー! そういえば私乗りたいやつあったんだ! 涼介、行こうっ」

 突然桜子が白々しい声音で言った。

 なぜかやたらとニヤニヤしている。

 すると涼介くんも。

「あー、そうだったね! じゃあそういうことで俺たちは行くからっ。ふたりはカフェでごゆっくり~」

 なんて桜子と同じような声と表情で言うと、桜子を連れてそそくさといなくなってしまった。

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