千早くんは、容赦が無い
 そもそも、千早くんが私に好きとかかわいいとか言ってくるのって……。

「そうは言うけど、千早くんの好きな『ちぇりー』は私じゃないかもしれないんだし」

 ――そう。

 まだその問題は解決していないんだ。

 好きとかかわいいとか容赦なく言ってくる千早くんだけど。

 その言葉は全部、私じゃなくて桜子に向けられているのだとしたら?

 もしそうだったら、私ひとりで舞い上がって馬鹿みたいだよ。

 すると桜子は呆れたような顔をした。

「まだそんなこと言ってるの? いやいや、今日の千早くん見たけど、確実に亜澄にほの字でしたから。もう『ちぇりー』のことなんて関係ないんじゃないかなって思ったよ」

「関係ないって?」

「きっかけはどうであれ、もう千早くんが好きなのは確実に亜澄だよ。私にはそうとしか見えなかったもん!」

 前のめりになって、桜子は断言した。

 そうなの?

 本当に?

 そうだったら嬉しいけれど……。

 でもそうなるとやっぱり、いつどうして千早くんは私のことを好きになったんだろう?

 タイミングもきっかけも、どうしても思いつかないよ。

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