千早くんは、容赦が無い
「最初は軽い無視くらいだったんだけど、それであたしがスルーしてたら『調子に乗ってる』とかみんなの前で言いだしてさー。練習中もミスってないのにミスしただとか音が悪いとか、難癖付けてくるようになっちゃって」
そう言って、「あはは……」と麗奈は力なく笑う。
ひどい……!
麗奈は何も、悪いことしていないのに。
「麗奈、先生に相談したら? お母さんやお父さんにも相談して――」
「あー、それはダメ。コンクール前でみんな熱心に練習してるからさ。あたし個人が受けてるだけのちょっとしたいじめで、部を乱したくないよ」
私の言葉にかぶせる様に、麗奈はちょっと強い口調で言った。
「それだけはやめて」という、麗奈の意思が伝わってくる。
だけど私は麗奈のことが心配だよ……。
「そっか……。どうしたらいいのかな」
「んー、告白してくれた男の先輩自体はいい人でさ。私が振った後も友達として接してくれてるんだけど、女子の先輩の周りだけが苛立ってる感じでさ。だから部員の中にも、あたしをかばってくれる子もいるの。……だけどやっぱちょっとしんどくて、部にいづらいんだよね」