千早くんは、容赦が無い

私は「ちぇりー」

 その次の日の朝。

「おはよー、亜澄」

 家を出て何歩か歩いたところで、聞き慣れた声に挨拶された。

「あ、陸。おはよー」

 三軒先に住んでいる陸だった。

 陸は隣に来ると、私に歩調を合わせる。

 別に陸とは一緒に登校しようって約束しているわけじゃないけど、なんだかんだ毎朝こうして出会って並んで学校に行っている。

 ――あれ? だけど確か……。

「陸、今日からサッカーの全国大会でいないんじゃなかったっけ?」

 そんな話を聞いていた覚えのある私は尋ねた。

 陸の所属しているサッカー部が地区大会を優勝し、全国大会に駒を進めたという話を、少し前に聞いた。

 それで全国大会は遠方で行われるので、大会中はサッカー部員はみんな学校を休むという話だったはず。

「そうだけど、今日の午後出発なんだよ。だから午前中は普通に授業受けなきゃいけないんだ」

「あ、そうだったんだ。頑張ってね! 勝ち進められますように!」

 幼馴染がそんな大きな舞台に挑むことは、素直に嬉しい。

 私は心からの応援の言葉を送った。

 するとなぜか、陸は少し照れたような顔をして、頬をポリポリとかいた。

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