千早くんは、容赦が無い
 そしてこのままでは、コンクールに出られなくなってしまうこと。

 千早くんは時々頷いたり相槌を打ったりしながら、真剣な顔で私の話を聞いてくれた。

「麗奈はさ、『あたしは二年生だし、来年もあるから』なんて言っていたけど……。本当はちゃんと練習に出てコンクールを頑張りたいんだと思うんだ」

「まあ、そうだろうなあ……。それだけずっと頑張ってきたんなら」

 渋い顔をして千早くんは答える。

 その表情から、とても親身になって麗奈のことを心配してくれているのが分かる。

 千早くんからしてみれば、会ったことも無くて顔も知らない私の妹のことだというのに。

「一体どうしたらいいのかな。先生に相談したらとも言ったんだけど、あんまり大事にはしたくないみたいで……。味方してくれる子もいるからって」

「なるほど、部員全員が麗奈ちゃんをいじめてるわけではないんだ」

「うん。それはまあ、よかったんだけど」

 千早くんはしばらくの間黙って考え込んだ後、こう答えた。

「俺だったら、女子の先輩のことはどうにかしようとはせずに、ただ頑張れって応援するかなあ」

「え?」

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