千早くんは、容赦が無い
「本当に辛いならコンクールは諦めるしかない。だけどそんなの相手の思う壺だよ。味方もいるみたいだし、堂々といつも通り部活に出て欲しいなって俺は思うな」

「そっか……」

　女子の先輩は、麗奈が部活を休んでいることにきっとせいせいしているはず。

　コンクールから外されでもしたら、いい気味だってますます思うだろう。

　それを想像すると、私だって悔しくてたまらなくなった。

「……全力を出せる機会があるんなら、周りのことなんて気にしないでやった方がいいよ」

　そう言った千早くんは、珍しくどこか寂しそうに見えた。

　考えてみれば、彼のそんな表情は初めて見たかもしれない。

　何か自分の経験を踏まえた上での言葉のような、そんな印象を受けた。

　不思議に思った私だったけれど。

「とりあえずさ。麗奈ちゃんがもっと自信を持てるようなことを、言ってあげればいいのかな」

　そう続けた千早くんの顔には寂しさは消えていた。

　さっきの彼の表情は私の気のせいだったかな？

　でも麗奈が自信を持てるような言葉って、どんなことを言えばいいんだろう？

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