千早くんは、容赦が無い
「はい。俺はねーちゃんの男です」

「ち、千早くんまで!?」

「マジ? えー、めっちゃイケメンじゃん。ねーちゃんやるぅ。あたしは麗奈、よろしくー」

「俺は千早、よろしくね」

 物怖じしない性格が通じるところがあるのか、ふたりは気さくそうに挨拶を交わす。

 わ、私ばっかりあわあわしてるじゃん……。

 なんだか悔しい気分に私がなっていると。

「ってか、麗奈ちゃんの演奏、さっきちょっと聞いただけなんだけどさ。めっちゃうまくね? あれはすごいわ。亜澄から上手だとは聞いてはいたんだけど、想像以上にきれいな音でびっくりした」

「え、ほんと?」

 千早くんが褒めちぎると、麗奈はまんざらでもなさそうに頬を緩める。

「ほんとほんと。正直ちょっと感動したわ~。……って、音楽詳しくないから語彙力無くて申し訳ないんだけどさ。頑張ってね!」

「えー、なんか嬉しいなあ。ありがと、千早くん」

 そう言った麗奈は、本当に嬉しそうな笑みを浮かべていて。

 昨日の寂しそうな表情が嘘みたいなほど、明るい笑顔だった。

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