千早くんは、容赦が無い
「そうだよ! 私もいつも思ってるけど、麗奈は本当に上手だから! これからも頑張りなよ!」

 私も千早くんの言葉に乗せるように、麗奈を褒めたたえる。

 そういえば今までは、演奏会の後なんかに「麗奈上手だったよ~」って軽く言ったことはあったけれど。
 
 こんな風に面と向かってしっかりと褒めて応援したことは、無かった気がする。

 姉妹という近すぎる間柄のせいか、逆に言っていなかったんだ。

「ねーちゃんまで。ありがと! なんか急に自信出てきたかもっ」

 麗奈は弾んだ声で言った。

 ――あ、そっか。

 千早くんが言っていた「麗奈ちゃんがもっと自信を持てるようなこと」って。

 こんな風に素直に、応援してあげるだけでよかったんだ。

 女子の先輩の嫌がらせなんか、些細なことに思えるくらいに。

「うんうん! 麗奈、一年生の時よりもすごく上手になってるっ。きっとコンクールでもいい演奏ができるよ!」

 麗奈をもっと奮い立たせたくて、私は断言するように言った。

 ずっと一生懸命練習していたのを見ているし、実力だってあるって私は知っているからね。

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