千早くんは、容赦が無い
 それをちゃんと、麗奈に伝えたくて。

 すると麗奈は照れくさそうに笑う。

「あはは、なんだか知らないけど急にめっちゃ応援してくれるじゃんー。何ー? 褒めても何も出ないよ?」

「だって本当のことだし!」

「えー、マジ元気出てきた。うーん、頑張ってみようかな。……あたしちょっとこれから、部活戻ってくるね」

 クラリネットをケースにしまうと、「じゃーね、ねーちゃんに千早くん」と言って麗奈は足早に去っていった。

 その足取りはとても軽やかに見える。

 麗奈の背中に向かって「頑張ってねー」と声をかける私と千早くん。

 麗奈は振り向かないまま、私たちに手を振って去って行った。

「千早くん、ありがとう! 麗奈、元気出たみたい」

 嬉しさでいっぱいの私は、心からのお礼を千早くんに言う。

「え? いやいや、俺はただ本当のこと言っただけだし。だって麗奈ちゃんマジで演奏うまかったんだもん。正直言って、思った以上だったわー」

 なんて、千早くんはいつもの調子でのほほんと言う。

 大したことなんてなにもしてないよ、とでも言いたげに。

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