千早くんは、容赦が無い
 そんな千早くんのさりげない優しさに、私はまたちょっと感動してしまう。

 本当に、千早くんのおかげなんだよ。

 私は麗奈に対してどうしたらいいのかわからなかったんだから。

 ただ応援して励ますってことすらも、できなかった。

 それに気づかせてくれてありがとう、千早くん。

 ……って、本当は口に出して言うべきなのかもしれないと思うし、実際は言いたい。

 だけど千早くんのことだから、「いやいや、俺は何もしてないってばー」なんて、軽い感じで笑って言うんだろう。

 だから私はこれ以上のお礼述べずにこう言った。

「麗奈、この後部活頑張れると思う」

 私は麗奈が去った方を目を細めて眺める。

 麗奈は千早くんのおかげで前を向いてくれた。

 そのことを伝えても感謝の気持ちが伝わる気がしたから、私はそう言ったんだ。

「うん。きっと頑張れるよ」

 千早くんの一際嬉しそうに笑って、頷きながら言った。

 まるで断言してくれるように、はっきりと。

「うんっ……!」

 私はさらにこみ上げてくる嬉しさに少し震えながら、弾んだ声を上げたのだった。


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